他人事ではない津久井やまゆり園の事件

今朝、津久井やまゆり園の事件は
とある温泉ホテルの1室で聞いた。

知的障がい者であるおとうとも一緒だった。

どこのチャンネルも同じニュース。
おとうとがニュースを理解できないのは幸いであった。

 


犯人像を聞きながら
犯人の気持ちも少しわかる気がした。

 


知的障がい者であるおとうとは、
普段は事件の舞台となったような知的障害者施設で生活してる。

生活の原資は障がい者年金である。

 


ははが生きている間は
おとうとの生活について詳細は知らなかった。

おとうとが生まれ育った家に帰るのは、盆と正月。
それ以外でおとうとに会うのは入居している施設のイベント時である。

 


昨年、ははが亡くなり兄である夫が保護者となった。

その時に初めて施設の職員の方から
いろいろな話を伺った。

障がい者年金を施設のほうで管理していること。

・10年位前に障がい者年金が大幅に減額となったこと。

・それ以前は、年金額が施設利用料を上回っていたので
 貯金があること。

・現在は、年金額が施設利用料に不足するので、
 貯金を取り崩していること。

・数年後には貯金がなくなること。

・その後は保護者に差額を負担してもらうこと。

・イベントを縮小したり普段の生活の楽しみも減らしていること。

・現在入居したばかりの若い方は最初から保護者負担があること。

・保護者が生活保護受給者になるなどした場合は
 入居者も生活保護を受給していること。

そして、夫が新しい保護者となるとともに
小学生の息子のことについても記録された。

夫がおとうとより先に亡くなった場合は、
息子が保護者になるのだ。

 


ははは、働き者で倹約家で少ない収入ながら
思いのほか多額の貯金を残した。

遺書もあり、財産はすべて長兄である夫に渡すので
障がい者であるおとうとを頼むという内容であった。

 


それにしても、約10年前、
障がい者年金が減額となったことを知ったとき
ちちとははは、どんな思いだったろう。

施設で生活して、貯金ができていれば
親である自分たちが逝ったあとのことを
さほど心配する必要もなかったろう。

葬儀費用なども本人の貯金で賄え
相続する財産もそれなりにあるのだ。

しかし、一転、貯金が底をついた後は
保護者が出資しなければならないとなったら…

 


ははは、ちちが逝ったあとは
一人で誰にも言わずに
障がい者である息子のための準備をしてきたのだ。

障がい者であっても
むしろ、障がい者であるからこそ
子への母の愛情は強いのであろう。

 


しかし、あかの他人から見れば
経済活動に寄与しない人たちである。

障がい者の言動により怖い思いをする職員のかたもいる。

日常生活がひととおりでき
私が見ている限りおとなしいおとうとも
施設では声を荒げたりするそうだ。

 


今回の温泉旅行もおとうとのガス抜きを兼ねている。

 


施設利用料は、決して高くない。

施設の職員のかたは本当に大変だと思う。

善意とか福祉の心とかの精神論だけで
解決できる問題ではない。